はじめに
5月15日(日) 午前8時過ぎ・・・飯舘村のカヨウ地区にあるS氏宅へと車を走らせる。氏曰く、この地名でわかってしまうだろうとのことだが、ご本人、お父さんの許可を得て、あえて地名を書くことにしました。なぜならば今後出てくる別の地域とこの地域との差があまりにもあり過ぎる点、現状を正確に記録として残しておくための措置です。S氏親子(というのは微妙な表現なのですが・・)は非常に前向きな方々で、今も将来も放射能と付き合って行かねばならぬ現状を自ら好機と考え、できることをし、自らもデータとして残したいという希望をお持ちです。
まぁ会って話してみればわかるのですが、私もS氏親子も・・・アマチュア無線家なのです。今の人には馴染みの薄いアマチュア無線ですが、ダンプなどの職業無線家(業務無線に使ってはダメなんですけどw)達と違って趣味で続けている人々はどこか”マニア”なのです。そのことは後に紹介する発電機などの発想を含めて・・ある意味生活のプロです。
■飯舘村 カヨウ地区とは
正式には”福島県相馬郡飯舘村草野カヨウ”というようです。 四方八方を小高い山に囲まれ、自然豊かな中にその地はあります。
新緑の季節。S氏宅へと車を走らせる
県道12号線から外れ、緑が綺麗な山道を進みます。地図的に見ると”二ツ森”という山があり、今回の福島第一原子力発電所の事故による影響を少しだけ軽減できたみたいです。S氏のお父さん曰く「ここより奥の方ではもっと線量が低いんだよ」と。それだけ地形に左右される事故だったと言えます。逆に言えば危険な地域も存在するという裏付けにもなります。
さて、車を進めると山間に畑(多分、本来は田んぼ)が見えてきました。
こののどかな風景はこの後起こる出来事を予想させないほど心が和みます。本当にこんなところが人が生活する上で危険とされるところなのか?と思いたくなります。
■自宅周辺の線量測定をしてみる
S氏、お父さんのお出迎えがあり、ご自宅へと案内をしていただきつつ、挨拶を兼ねて雑談をしました。一応初対面ではありましたが、やっぱりアマチュア無線家同士の出会いというのはなんか普通の出会いとは違うようです。一般的に言えば、”マニアとマニア”が出会う。これはネット中毒の皆様にも共通的なことだと思います(汗)
どんな会話をしたかは記憶も怪しいので本題へと話を進めます。S氏宅の雨どいの出口が非常に高線量だというのです。ビデオを見ているとお父さんが一言・・”170はあった”と。つまり、少し前に計測したら170μSv/hという数値が出てしまったというのです。皆さん、この数値をどう考えますか?もちろん、空間線量ではないので当然ながら多くの放射性物質が沈着してこの数値になったというのは理解できると思います。ここで何故、雨どいの出口が数値的に高いのかを簡単に説明します。皆さんのご自宅でも同様な結果は出ますので、ガイガーカウンターを買った人はお試し下さい。
■雨どいが危険な理由
飯舘村の空間線量の違い、地面計測の数値の違いは放射性物質の拡散によりまだら模様になっています。これは当初から知られていた事実であり、一律20km、30kmとは言い切れない部分に重なります。
雨どいはご存じ、屋根に降り注ぐ雨などの水を受け、そして地面へと排水します。都内などではこの出口を直接配水管に接続し、側溝や下水へと流してしまうことが多いのですが、当然それはコンクリートジャングルの話であり、殆どの場合は地面へと流してます。この水を通称”雨水”と呼びます。また、雑排水と一緒に処理されるのが一般的です。管理区域の場合は場所によっては雨水ですら放流せずに貯留槽へと蓄えることもあります。原子力発電所では今までどうしていたのでしょう・・・本当はこの様な部分が問題なのであって、マスメディアは事実を知らないわけです。(東京電力から図面出てきたら凄いんだけど・・弱点さらけ出すので無理ですね)
飯舘村では3月中旬は”雪”だったようです。11日の地震、津波の影響により測定機器が電源が落ちて稼働しないまでか、通信回線も遮断され、データ収集が行えなかったみたいです。気象庁もどこまで詳細に把握しているかはわかりませんが、現地の人の記憶を辿れば確実に時系列的に気象条件は絞り込めるでしょう。
この雪、空気中の放射性物質(微粒子も含む)を確実に地上へと落とし込んでしまったのです。そして地表に積もり、さらには屋根に積もったわけです。雪は当然溶けます。それは雨どいを伝わり、地面へと流れ出ます。屋根の広さにもよりますが、屋根という広いところに積もった雪には多くの放射性物質が含まれ、それが徐々に溶けて流れ出る。つまり、その出口に集約される=濃度が上がるということです。
地面の場合は広く、平均的に放射性物質が拡散すると考えられます。当然、これも気象条件などが関係しますので一概には言えませんが、地表面には拡散します。地表に沈着した放射性物質は放射線を放ちますので、空間的に計測する線量が高くなります。
逆に濃度が上がった場所となる雨どいの出口はこの空間線量を大幅に超えた数値が計測されます。ここには放射性ヨウ素を含め、半減期の長いセシウムなどが多く沈着するのです。
別の記事に書きましたが、東京の郊外であるあきる野市においても我が家で同様な現象が起こったという痕跡を確認してます。昨日、アセチレンガスなどを受取にいった先での大きな屋根の出口で測定したら我が家よりわずかながら高めの数値がでました。この様に面積にもよりますが、どこの家でも雨どい出口は確実に放射性物質が貯まり、沈着し、放射線を通常より多く計測することになります。
■S氏宅の雨どい出口を計測してみる
S氏、お父さんの協力の下、雨どい出口を計測してみました。両氏は”自腹”で中国製の線量計を購入されてました。合計4個買ったとのことですので、概算でも数十万の支出となります。これを東京電力さんに請求すれば支払ってくれるのでしょうか?あっ、私も間接的に同じ理由で使ってます。調査、機器、その他で50万ほど東京電力さんに請求して宜しいでしょうか? 本当に面倒なことになりました。全ては東京電力が悪いとは言いません。はっきり言います。国策ですので・・国の責任が大きいです。実行部隊は東京電力でも、多くの役人、天下り、その他の学者先生達は美味しい汁を吸い続けていたのですから、我々国民に還元、特に福島第一原子力発電所周辺の住民、福島県、栃木県、その他、多くの市民に戻すべきです。つまり、”東京電力管轄では電気代を1年くらい無料にしてもいいんじゃないですか?”。さらには東京電力の設備がありながら一切使っていない東北電力管轄の被害を受けている方々へも同様に・・
少々感情的になりましたw いやね、真面目に今回の件で普通に電気料金の請求するなんて民間企業ならあり得ない話ですよ。おかしいでしょ? 計画的停電で迷惑をかけ、原子力発電所事故はこれから問題が浮き彫りになりますが、日本という国、国民の評価を下げたわけです。40年前の設計だから・・・企業、国なるもの、今の担当者、今の役人、今の内閣が責任を負わねばならいという、まぁ理不尽であっても仕方ないのでその点、次期政府も含めて宜しくお願いします。(少しは同情しますよ・・直接的原因じゃないんだもの。でも、お金をサラリーマンの平均的収入のはるか上で得ていたのですから・・皆、許したくても許せないでしょう)
ということで・・ずば~んといきます。
○S氏宅 雨どい測定の図
雨どい出口で線量が高い部分を計測してみた
※S氏、お父さんの線量計にはビニールがかかってません。そこの突っ込みは許してあげて下さい。計測結果だけ見ていると”汚染”してしまって高い数値が出ているわけではなく、実際に高過ぎる環境なのです。
中国製が不安な方々へ 安心して下さい!動作OK
実は今回の計測前に測った時は先ほど書いた通り170μSv/hはあったそうです。ヨウ素の半減期による線量軽減や雨降ったりして流れてしまったことがその要因として考えられます。まぁヨウ素131はすでに薄れているはずなんですが・・・
ちなみに両氏の線量計は中国製でヤフオクで意外と安価で買えるモデルです。でも何度も測定を比較しましたが、飯舘村のような空間線量が高い地域、表面計測では意外と正確です。東京のような空間線量が低いところでは信頼性が薄れますが、この場所での測定を見る限り、安物であっても動作はちゃんとしてます。すでに買ってしまった方で動作が不安な方・・・安心できました? 心配ならオフやりますからね!
○ビニールハウスは救済してくれる?
よく考えれば当たり前です。ビニールハウスというのは雨風をしのぎ、冬でも室温を高くでき、野菜の生長を促す場所として使われてます。つまり、事故当初の雪の日も多量の放射性物質を付着させた雪から土壌を守ったということです。
このことは農家の方にとっても今後、何らかの対策につながるのではないかと思います。当然、空間線量が高いので全体的には高く検出されます。しかし、ビニールハウスの周辺と際、中では測定結果が大きく異なることがわかりました。
周辺が5μSv/hとすれば、ビニールハウスの際はそれを大きく上回り、ビニールハウス内部の土壌は大きく下回ります。空気の流れにより多少は放射性物質が内部にも拡散すると思います。しかし、通常表土を5cmさらえば線量が下がるとするなら、ビニールハウス内は1cmでも十分なはずです。
S氏 ビニールハウス周辺の空間線量 約3μSv/h
S氏宅 ビニールハウス近くの地面 約5μSv/h
ビニールハウス内で比較してみた
地面にベタ置き状態ですから、地表からの影響をもろに受けます。この状態での線量計の数値は・・
私の表面測定では 1.5~2μSv/h程度でした
S氏、お父さんの線量計では1μSv/h前後でした
空間線量が高いために影響は受けてますが、地面近くの線量が非常に低いという点だけはおわかりになると思います。この数値は福島県が発表する福島市や郡山市よりも低いと思われ、露地栽培より安心ということになります。
残念なことに、ビニールハウスでの栽培はそう多くないと思います。この点は今後の農業のあり方でも検討すべき内容なのかも知れません。もちろん食ではなく、鑑賞用の花などであれば、短い期間しか鑑賞しないとするなら健康被害は皆無ではないでしょうか?(意味深・・)
以上がS氏宅周辺の測定に関するレポートでした。
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